『深夜特急』を読むとなぜ旅に出たくなるのか?|この一冊が僕を旅へと誘った理由

―1巻の読後、行動せずにはいられなかった

人はなぜ旅をするのか——。

今の生活に大きな不満があるわけじゃない。
やるべきことも、それなりにこなしている。

それでもふとした瞬間に思う。
このままでいいのか?

気づけば、敷かれたレールの上を歩くことに慣れていて、
立ち止まったときにこんな問いが頭をよぎる。

幸せって何だっけ?
何のために生きてるんだっけ?

こんな感覚を覚えたことのある人もきっと少なくないと思います。

「深夜特急」には「旅に出れば人生が変わる」といった、わかりやすい希望は語られません。
人生の答えも、明確な教訓もほとんど出てこない。

ただ、
自分の中にあった小さな違和感を静かに掘り起こしてくれる
そして、行動を起こしてしまうきっかけとなる

そんな一冊です。

僕自身、この本を読んで、
世界を自分の目で見たいという衝動に駆られ、気づけばバックパックを背負い、
東南アジアを一ヶ月、そしてインドを一ヶ月一人で歩くようになりました。

この記事では、

  • 『深夜特急』のあらすじと時代背景
  • なぜ読者が旅に出たくなるのか
  • 実際に僕が旅に出た理由

をまとめます。

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それより、私には未来を失なうという「刑」の執行を猶予してもらうことの方がはるかに重要だった。執行猶予。恐らく、私がこの旅で望んだものは、それだった。

深夜特急2 第6章 海の向こうにーシンガポールー より

『深夜特急』のあらすじと時代背景

デリーからロンドンへ|乗合バスで横断する無謀な旅

『深夜特急』は、1970年代——
スマホもインターネットも存在せず、世界が今よりずっと広く感じられていた時代——
のアジア・ヨーロッパを舞台にした紀行文です。

著者の沢木耕太郎さんは当時26歳。
ライターとしての仕事が軌道に乗り始め、少しずつ名前も知られるようになっていた頃でした。

しかしその一方で、仕事が増えるにつれて、生活のほとんどが「書くこと」に支配されていく現実に、彼はある種の恐怖を覚えます。

このまま仕事に飲み込まれていいのか。
執筆以外の時間や、好きなことをする余白が失われていくのではないか。

そんな現状に違和感を抱えた彼は、唐突に全てを投げ捨てて日本を発ちます。

本書の大きなテーマは、
「デリーからロンドンまで、乗合バスだけで行く」
という今考えても無謀とも言える挑戦です。

陸路でいくつもの国境を越え、文化も宗教も価値観も違う異郷の地を渡り歩く。
この酔狂とも言える旅が、多くの読者の中に眠っていた“旅への衝動”に火をつけました。

『深夜特急』が世に出されたのは、旅から10年以上が経った1986年以降。
全6巻として刊行され、出版から40年近くが経った今でも、なお多くの人に読み継がれています。

沢木耕太郎の旅のスタイルと文章の魅力

本書の魅力は、観光ガイドや一般の旅行記には決して載らない、
沢木さんの”旅人としての精神”が滲み出ていることだと思います。

できるだけ現地に身を委ね、その土地の流儀に身を合わせること。
理不尽や不条理をすぐに意味づけたり拒絶したりせず、まずは受け入れてみること。

そして、旅の途中で自分の中に生まれた仮説を疑い、反証し、安易に単純化しないこと。
──その土地の断片を切り取って「分かったつもり」になることを彼は徹底して避けます。

実際に旅をしながら読むと、驚くほど共感できる場面が次々と現れるでしょう。

一方で、
「あの時代の旅は、今よりもはるかに過酷だったのだろう」
「これは自分には到底できない」
と、時代背景や環境の違いに圧倒される瞬間も訪れます。

それでもなお、ページをめくる手が止まらないのは、沢木さんの文章の美しさと、結論を押しつけない哲学が、読む者の内側にそっと入り込み、
考える余白を残してくれるからです。

『深夜特急』は、一人旅の記録であり、若さの衝動の記録であり、
同時に、自分はいまどこに立っているのかこのままでいいのかという、
読者自身の現状への問いを浮かび上がらせる一冊なのかもしれません。

『深夜特急』の感想|なぜ旅に出たくなるのか

現代人にも通ずる迷い|”執行猶予”

『深夜特急』の出発点には、沢木さん自身の強い恐怖があります。
それは、ライターとしての仕事が軌道に乗る一方で、気づけば自分の人生が仕事に少しずつ支配されていくことへの違和感と不安でした。

この感覚は、決して特別なものではないと思います。現代を生きる私たちの多くも、どこかで似た迷いを抱えているのではないでしょうか。

誰しも、自分の生きる道について、かすかな引っかかりを感じながら生きています。
それは、「自分で選んだ道」だと思っているものが実は「いつの間にか選ばされていた道」「気づけばそうなっていた道」であることが多いからです。

その迷いに対する答えが旅の中にあるとは限りませんが、少なくとも答えに近づくヒントをくれるかもしれない。
あるいは、自分が何に違和感を覚えていたのかを、はっきりさせてくれるかもしれない。

そんな淡い期待を胸に、人は旅に出るのではないでしょうか。

——沢木さんは本書の中で「執行猶予」と表現しています——
自分の未来をどうするのか、どんな生き方を選ぶのかという決断をほんの少しだけ先延ばしする猶予期間。

そしてその猶予の中で、自分が本当に何を恐れ、何を望んでいるのかを見極めようとする。
『深夜特急』が描いている「執行猶予」とは、そうした時間のことなのだと思います。

実際、旅の時間は驚くほど「暇」です。
何もすることがない時間が続き、否応なく自己内省に向き合わされます。

一方で、異国の文化や異なる価値観、人々の温かさといった、日常では味わえない強烈な刺激にもさらされる。
その往復運動の中で、人はいつの間にか、固定化されていた思考の型から外れていきます。

『深夜特急』は、旅好きのためだけの本ではありません。
学生からビジネスマンまで、社会を生きる全ての人に
「このままでいいのか」という問いを等しく投げかけてきます。

情報が溢れ、効率や正解ばかりが求められる現代において、
この本は、人間の心の奥底に眠っている衝動や欲求、そして生きる活力に静かに息を吹き込んでくれます。
だからこそ、人はこの本を読み終えたあと、気づけば旅に出てしまうのだと思います。

しかし人には、わからないからこそ出ていくという場合もあるはずなのだ。私が日本を出てきたことのなかには、何かが決まり、決められてしまうことへの恐怖ばかりでなく、不分明な自分の未来に躙り寄っていこうという勇気も、ほんの僅かながらあったのではないかという気がするのだ……。

深夜特急2 第6章 海の向こうにーシンガポールー より

僕が一人旅に出た理由

僕自身も、そのひとりでした。

僕が初めて旅に出たのは、20歳の秋。
高校を卒業し、大学に通い、気づけば時間だけが過ぎていく。
もうすぐ社会に出るという現実を前にしながら、将来の姿は何ひとつ見えていませんでした。

当時の僕が求めていたのは、「何かを変える新しい視点」と「本物の自由」という、輪郭のぼやけたものだったのだと思います。
バックパック一つで東南アジアへ向かったのも、深く考えた末の選択ではなく、ほとんど衝動でした。

しかし、今振り返ると、その行動の根底には、確かに『深夜特急』が投げかけた問いがあったのだと感じます。

今では旅は、僕の人生と切り離せない存在になっていますが、
その原点にあるのは、間違いなくこの一冊です。

『深夜特急』を読んだからといって、誰もがすぐに旅に出たくなるわけではありません。
ただ、自分の中にあった小さな違和感を、静かに掘り起こしてくれる。
そして気づいたときには、結果として旅に出てしまっている。

『深夜特急』は、答えを与える本ではありません。
人生に対する「問い」を、確かに手渡してくる本なのです。

旅に出て気付いたこと|本当の幸せとは? 

旅に出る意味|幸福の再定義

「たった一ヶ月そこらの旅で、価値観など変わるわけがない。
ましてや、人生の答えやヒントなど見つかるはずもない」

そう思う人もいるでしょう。
僕も同感です。人生を根こそぎ変える“何か”を求めて旅に出ると、たいてい肩透かしを食らいます。

ただし——
価値観がひっくり返らなくても、新たな視点を得られることは確かです。

旅をしていると、実に様々な人に出会います。

自転車ひとつでいくつもの国境を越えていく旅人。
色んな国を飛び回りながら、片手間に仕事をするカップル。

昼間から酒を片手にトランプに興じるおっちゃん。
トゥクトゥクの座席で、風に揺られながら昼寝をするうんちゃん。

みんな特別裕福ではなくても自分の自由な時間があって、
世間体など気にせず自分の思うがままに生きています。

そんな姿を目の当たりにすると、
かつては持っていたが成長の過程でどこかに置き忘れてきた“重要な何か”を
取り戻せるような気がします

無邪気な心というか、何の損得も考えない心というか。
理由もなく満たされていた感覚。

「ああ、これって幸せだったんだな」とか
「こんな生き方もありだな」とか
自分を客観的に見つめ直すことができます。

その経験は、日本にいるとなかなか得られません。

「べき論」からの解放|もっと自由に

旅は、自分の生活を一度外側から眺めさせてくれます。
何が幸せで、そのために何が必要なのか。

日本で暮らしていると、知らず知らずのうちに
「こう生きるべきだ」「こうしていないと不安だ」
という“型”にはめ込まれていきます。

良い大学。
安定した仕事。
周囲からの評価。

それらを否定するつもりはありません。
しかし、旅に出ると気づくのです。
それが絶対条件ではないということに。

世界には、もっと曖昧で、もっと自由で、
それでも確かに生きている人たちがいる。

その事実を知るだけで、
胸にのしかかっていた重さが、ほんの少し軽くなる。

凝り固まった日本社会の風潮、人々を生きづらくしている義務感などから
開放してくれるような、そんな新しい視点を持つことができます。

べき論に縛られなくていい。
もっと自由でいい。

旅はそれを、声高にではなく、
静かに、しかし確実に問いかけてきます。

こんな人に『深夜特急』はおすすめ

『深夜特急』を読むべき理由|迷っている“今”だからこそ刺さる

旅は、誰にでも簡単にできるものではありません。
時間も、お金も、勇気もいる。

でも——
この本を読むことなら、今日からできる。

『深夜特急』は、旅のハウツー本ではありません。
しかし、ページをめくるうちに、自分の内側に眠っていた違和感や衝動が静かに輪郭を持ちはじめます。

僕が旅に出たのも、特別な決意があったからではありません。
ただ、
「自分にもできるのかもしれない」
そんな小さなきっかけがあったからです。

人生を動かすのは、案外そういう小さな揺れです。
だからこそ、まずはこの一冊をすすめたい。

もしあなたが——

  • 安定した日々を送っているが、理由のない窮屈さを感じている
  • “効率”や“正解”ばかりが重視される社会に疲れている
  • 他人の物差しではなく自分の視点で世界を見てみたい

そんな感覚を少しでも抱えているなら、
この本は必ず引っかかるはずです。

旅に出るかどうかは、そのあとでいい。
自分の内側が、何に反応するのかを確かめることから始めてほしい。

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Kindle版6巻セットをおすすめする理由

『深夜特急』は全6巻。
香港から始まり、アジアを抜け、ヨーロッパへと続いていきます。

1巻だけでも衝撃はあります。
しかし、この物語は“通して読む”ことで、はじめて意味を持ちます。

若さの衝動だけでは終わらない。
興奮も、葛藤も、憤りも、すべて含めて進んでいく。

その過程を追体験するからこそ、
読後に残るものがある。

断片ではなく、流れとして読むこと。
それが、この本の本当の醍醐味です。

もし少しでも心が揺れたなら、
その揺れを最後まで見届けてみてください。

旅の入り口は、ここにあります。

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電子版なら、思い立った瞬間に読み始められます。
重たい決断はいりません。

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読み終えたとき、あなたはもう“元のまま”ではいられない。
まずは、ページをめくることから。

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